米どころだから
米菓・餅菓子もおいしい
明治35（1902）年に創業した江口だんご。創業当時は串団子やおはぎ以外に総菜、煮しめ、お酒も提供する昔ながらの茶屋として住民や旅人たちに親しまれていました。
「米どころであれば造り酒屋も多く、水も良質。戦後の昭和にはおいしいお米を使って団子、大福、おはぎを作る餅菓子屋が市内にたくさんあったそうです。洋菓子が定着し始めるとその数は減っていきますが、時代の変化と共に形を変えながら、餅菓子屋は生き残ってきました」。
教えてくださったのは、4代目の江口太郎さん。あんこが主役の大福に生クリームを入れてみたり、みたらし団子のソースをプリンに応用してみたり……。
若い人たちにも餅菓子を食べてもらうきっかけ作りを意識し、商品開発に取り組んできました。「大事なものはちゃんと残すけれど、残し方も工夫しなければいけない。長岡の米の特徴を生かした商品作り続けることで、他県の老舗菓子店にはないおいしさを提案しています」
長岡の野菜や郷土料理を
菓子から伝える斬新な発想
餅菓子に現代の要素を加えて進化してきた江口だんご。工夫しなければなくなってしまうのはお菓子だけではないと江口さんは語ります。
「長岡の郷土料理には雪国の文化が反映されたものがたくさんあります。例えば煮菜は、冬の閉ざされた生活で生まれた発酵食品。乳酸発酵させるには手間がかかるため、家庭で登場する機会は減ってしまいました。そこで、煮菜を使った餅ピザを私たちは作っています。巾着ナスや神楽南蛮といった長岡の野菜を使うのも、一工夫加えることで多くの人に食べていただきたいから。加工食品屋として、地元の素材をさらにおいしく味わっていただけるよう心がけています」
店舗販売、通信販売を介して、全国各地に商品を展開している江口だんごですが、営業部はありません。“おいしさを伝えるのはお菓子”。そのこだわりに興味を持ち、古民家を再生した本店には全国からお客さんが訪れます。
川と里山、そしてのどかな田園風景が広がる長岡市宮本で、“本当の豊かさとは何かを”気付かせてくれました。
城下町・長岡には
愛され続ける銘菓がある
「東京・赤坂で修業をしていたとき、どの店も勢いがあり、どうやったって敵わないと実感しました。でも、団子を食べてみると『おや？』っと感じて。和菓子屋としては勝てなくとも、米を使ったお菓子なら勝負できるかもしれない。東京では作れないお菓子を長岡で作ろうと決心しました」
コシヒカリの特徴である粘りを生かした商品作りに力を入れ、平成17（2005）年には幻の大正餅を復活。栽培の難しい大正餅のもち米作りから取り組みました。お菓子に使うコシヒカリは長岡産を中心に、新潟県産が基本。本店2階にはカフェスペースを設け、作り立てのおいしさも味わえます。
「全国の城下町にはお殿さまに献上された歴史あるお菓子が残っています。越乃雪（越乃雪本舗大和屋さま）や大手饅頭（紅屋重正さま）などの献上菓子が残る長岡も同じ。歴史深い銘菓を大事にしながら、長岡を回遊できる街づくり、発酵・醸造文化を楽しむ仕組みづくりに取り組んで行きたいです」
甘いものだけでなく、浪花屋製菓さまや加藤製菓さまの米菓も大好きと笑顔で話す江口さん。酒粕や和島のガンジー牛乳など、地元素材を生かした新商品の開発が進む長岡のお菓子に今後さらなる注目が集まりそうです。
お話を聞いた方
株式会社江口だんご 代表取締役 江口 太郎さん
