長岡の野菜を
彩り豊かな漬物に昇華
梨ナス、ズイキ、錦糸ウリに、大口レンコン……多彩な地元野菜を手軽に味わえる漬物が長岡で作られていることをご存知でしょうか? 敵度な塩味と写真映えも期待できる美しさで世代を問わず支持される栁醸造。明治20(1887)年創業の老舗みそ屋ですが、創業当時は米穀商でした。大正12(1923)年にしょうゆ・みその製造販売をスタートしています。
「漬物を作り始めたのは昭和55(1980)年。駅ビルへの出店が決まった年に、みそだけでは寂しいと浅漬の製造を始めました。看板商品である梨なすの浅漬やキャベツの重ね漬は40年ほど前から続くヒット商品。キャベツの重ね漬は若い世代にも手に取って欲しいと開発した自信作です」
笑顔で教えてくださったのは、栁醸造の栁和子さん。スタッフやお客さんの声を反映しながら商品開発に力を入れてきました。秋冬にはカキノモトの酢漬や白雪こかぶを使った菊とかぶの酢漬けもお目見え。季節ごとに旬の長岡産野菜を取り入れています。
「できる限り地元野菜を使い、全て手作りというのが私たちのこだわり。取れたての野菜は発酵させることでうま味が増し、しばらくの間おいしく召し上がれます。みそ、しょうゆ作りで培ってきた醸造の知恵を漬物作りに生かしています」
野菜のおいしさが増す
やなぎのピクルス
自社製のみそや長岡の野菜をもっと多くの人に食べて欲しいと漬物作りに挑戦し続け、平成29(2017)年にはロゴやパッケージを一新。2年後には現代の食事に合うようにと“やなぎのピクルス”が誕生しました。使用する野菜はもちろん、味付けに欠かせない日本酒にも長岡産のものが使われています。
「試作を繰り返し、5種のビン詰めピクルスが完成しました。雪深い新潟で育ったキノコや地元のニンジン、長岡のかぐら南蛮も酢漬けにしています。輪切りのオレンジを入れたカクテルピクルスは長岡花火の三尺玉をイメージしました。爽やかな味わいはあっさり系の日本酒やワインとも相性が良いですし、カレーのお供としてもおすすめです」
長岡名産の希少な大口レンコンを使用したピクルスは、毎年数量限定で製造。さらにキャベツ、玉ネギのピクルスも仲間入りし、全7種のシリーズとなりました。地元野菜をおいしく、美しく提供するための開発はまだ始まったばかりです。
雪国に息づく
発酵の技術を応用
栁醸造本社がある長岡市三島地域は、JR長岡駅から車で20分ほどの場所にあるのどかな農村地帯。清冽な水を生かして商品作りを手がける酒蔵、食品製造業者が点在しています。冬には大雪に見舞われるこのエリアでは、思うように外出できない各家庭でみそや漬物作りといった発酵の文化が根付いていったそうです。
「今では一般的になりましたが、家庭で作るのが当たり前だった漬物を店頭販売することはとても難しかったです。ましてや、みそ屋が作る浅漬でしたからなおさらのこと。それでも、創業当時から掲げてきた『お客さまの毎日の食卓のお役に立ちたい』という思いを込めて、今日もみそ作り、漬物作りに努めています」
栁醸造の売れ筋商品の一つにかぐら南蛮を使用した“おかずみそ”という商品があります。こだわりのコシヒカリ玄米みそを使ったこの商品は、おにぎりの具材にもピッタリと家庭向けに考案されましたが、最近ではホテルの朝食会場や飲食店の調味料としても浸透しています。長岡の素材、伝承技術から生まれた加工食品の数々が、意外な場所でも愛され始めているようです。
お話を聞いた方
栁醸造株式会社 代表取締役 栁 和子さん