長岡の肉のおいしさを
料理を通して伝えたい
JR長岡駅前に地元で育った牛肉を積極的に提供している居酒屋があります。駅から徒歩3分の和ダイニング朔。「寝かせておいしく」をコンセプトに、中之島や山古志で肥育された牛肉を熟成させ、最も旬の状態で提供しています。
「お肉は寝かせたほうがおいしい。これは紛れもない事実です。長岡市内にはブランド肉を育てる畜産農家さんが複数名いらっしゃいましたが、この15年で半分にまで減少しています。畜産農家の方々が手塩にかけて育てたお肉を、ただスーパーで売るだけでは本当の価値が伝わりません。お客さんへダイレクトに商品の魅力を伝えられる僕たち飲食店が代弁しなければと、8年前から提供を始めました。地元の中島牧場さんに僕の同級生がいるというのも大きく影響しているんですけどね(笑)」
長岡産黒毛牛や越後牛をはじめ、10月からはにいがた和牛の取り扱いも開始。ステーキはもちろん、宴会で盛り上がる鍋に、お通しのビーフジャーキーにと、長岡産のお肉がさまざまな料理に姿を変え、人々を笑顔にしていました。
豚・鶏もおいしい
長岡のブランド肉
「肉を熟成させたとき、おいしくなるのは脂身より赤身」と山﨑さん。霜降りの度合いが重要となる牛肉の世界では大きな葛藤が生まれていると打ち明けてくれました。「牛肉はランクが高いほど高く売れますが、現在の日本のA5ランクは脂身を多く含む霜降り肉が中心。30年前は現在のA3がA5と評価されていました。赤身が多いA3も十分においしいという事実を伝えたい気持ちもあります。格付けに翻弄されることなく、肉本来のおいしさを実感してください」。
赤身が特徴の黒毛牛や越後牛は寝かせるほどにうま味が増してくるというのだから気になって仕方がありません。牛一頭から取れる全ての部位を余すことなく使い、同系列のシュラスコ専門店ESTA・GOSTOSA(エスタ・ゴストーザ)や与板★中川清兵衛記念BBQビール園でも、そのおいしさを味わうことができます。
牛のほかにも長岡市では脂までおいしい長岡ポークに、歯ごたえがありうま味の強いにいがた地鶏も育てられています。
和ダイニング朔では牛肉を中心に使用してきましたが、2020年からは豚肉にも挑戦。ふるさと納税の返礼品として角煮やソーセージを提供し少しずつ商品の幅を広げてきました。次はどんなチャレンジを行うのか。
今から期待に胸が高鳴ります。
全国、そして世界へ!
ECサイトから販路拡大
長岡産のお肉の魅力は「水とエサと空気にある」と山﨑さんは言います。牛の評価は血統5割、飼育5割と言われ、飼育環境はランク付けに大きく影響するそうですが、長岡の牛たちは越後牛も長岡産黒毛牛もコシヒカリの稲藁を食べて育つことで、他県のブランド肉に負けずとも劣らない良質な肉ができるそうです。
和ダイニング朔で提供される熟成肉の数々は、オンラインショップ「熟成工房朔」でも購入できます。コロナ禍の今年は巣ごもり需要が高まり、売上は300%を達成。今では店の稼ぎ頭としてECサイトの活用が進められています。全国各地に商品を発送し、確かな感覚をつかんだ山﨑さんが抱く次なる目標は、海外への販路拡大です。
「市場を広げるのはすごく大変なことですが、拡大していかなければどんなにいい商品も日の目を見る機会がありません。お肉が売れることは畜産農家さんたちの誇りにもなります。そのパイプを今後も作っていきたいです」。
お話を聞いた方
株式会社朔 代表取締役 山崎 武雄さん